謝晋(シエ・チン)監督作品
阿片
鴉片戦爭
THE OPIUM WAR
1997年中国映画/2時間30分/35ミリ/シネマスコープ/カラー/デジタルステレオサウンド

製作:峨眉映画製作所
四川《鴉片戦爭》影視制作有限責任公司
(成都匯通城市合作銀行、中華民族文化促進会、上海謝晋一恒通影視有限公司、上海精文投資有限公司)

配給:(株)徳間書店 東光徳間

STAFF 監督:謝晋/企画:許鞍華ほか/脚本:朱蘇進ほか/撮影:侯咏/音楽:金復載、黄漢
CAST 鮑国安(林則徐)、蘇民(道光皇帝)、高遠(蓉兒)、ボブ・ペック(デント)、
エマ・グリフィス・マリン(マリー)、郎雄(何敬容)、邵听(何善之)

香港返還と阿片戦争

1997年7月1日、イギリス領であった香港が一世半ぷりに中国に返還された。いつ、どのような経緯で香港はイギリスの植民地となり、長い試練の年月を送るようになったのか。その要因となったのが、阿片戦争(1840-1842)である。清朝の阿片禁輸に端を発し、イギリスが清を攻撃したことから阿片戦争は始まった。長い鎖国のため、近代化に取り残された清は、この戦争で大英帝国の最新の軍備の前に敗れた。その時に結ばれた南京条約(1842)によって、清しはイギリスに多額の賠償金を支払い、香港の割譲を余儀なくされた。この歴史的事件は世界に衝撃を与え、日本などアジア諸国にとっては、近代史の幕開けともなった。

『芙蓉鎮』『乳泉村の子』の
巨匠謝晋監督が描く歴史大作

映画『阿片戦争』は、謝晋監督が最新の研究資料を分析し、香港、台湾、日本、イギリスの研究者、映画人を結集して、完成させた歴史大作である。中国映画史上最高といわれる製作費1億元(日本円で14億円)は、謝晋監督の呼び掛けによって、すべて民間から集められた。阿片戦争は通商上の戦いであると唱える、欧米の一方的な視点が根強くすあった。しかし、謝晋監督は、この映喝で、清朝の凋落していく様子やイギリスの策略など、戦争に至る過程を客観的にリアルに再現して、歴史の真実の姿に迫った。

中国近代史のヒーロー、
林則徐

映画は、阿片厳禁論を掲げ祖国の危機に立石向かった林則徐を中心に描かねる。1838年、林則徐は欽差大臣(特命全権大使)として広州に赴任した。当時、年間4万箱もの阿片が密輸入されていた。その頃のイギリスでは、阿片を吸引した者には極刑を課していたという。その阿片輪出によって、イギリスは、中国からの輸入超過分を是正しようとしたのだ。阿片は、政府高宮から庶民にいたるまで蝕み、国家財政の4分の3に当たる多額の銀貨がイギリスに流出していた。林則徐は、イギリスおよぴ国内の阿片商人を徹底的に取り締まり、没収した2万箱の阿片を人工池で廃棄した。こ机を機にイギリスの反撃が始まり、阿片戦争へ発展する。

中国。香港、台湾、イギリスの
演劇・映画人が結集

林則徐を演じるのは、中国演劇界を代表する鮑国安(パオ・クオアン)。阿片商人・何敬容には、映画『恋人たちの食卓』(94)で知られる台湾の舞台俳優、郎雄(ラン・ション)、その息子・河善之に、台湾の人気俳優、邵听晰(シャオ・シン)。イギリスの阿片商人テントを、ロイヤル・シェイクスピア劇団の名優ボブ・ペックが演じている。こうした経験豊かな舞台出身の俳優たちの演技が、この作品に重厚さを持たせている。さらに、イギリス部分のシーンは『女人、四十。』(95)などで知られる香港の女性監督・許鞍華(アン・ホイ)が協力している。


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